このたび勁草書房より、『危機対応学―明日の災害に備えるために―』(東大社研 玄田有史・有田伸編)が刊行されました。私も執筆に参加させていただいています。東京大学社会科学研究所で2016年~2019年にかけて実施されている全所的プロジェクト「危機対応学」の、最初の成果刊行となります。是非、お手にとってみて下さい。
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私は、第5章「居住と愛着―『暮らし続けたい』を決めるもの」を執筆しています。東日本大震災では、その復興にあたって多くの人が転居を余儀なくされました。「いまの場所に暮らし続けること」は日本人にとってどのような意味をもっているのか、どのような要因が地域への愛着や暮らし続けたい気持ちに影響を与えるのか、災害のリスクや被災の経験はそうした気持ちにどのような影響を与えるのかなどを考察しています。
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このテーマは、調査に協力いただいた自治体での関心が高かったために執筆することとなりました。私は普段、労働市場や雇用についての研究が専門で、この章で扱ったコミュニティや災害の専門家ではありません。しかし国内外のコミュニティ研究をサーベイしていくなかで、思いがけない形で自分の本来の研究テーマである日本の企業社会との接点が見えてきました。「日本の企業社会はコミュニティである」とその特徴を定義したのは、稲上毅先生です。今回、アメリカの都市社会学などの古典的なコミュニティ研究の文献をひもとくなかで、先生が「コミュニティ」といわれた時にどのようなものを指しているのかが、初めて腑に落ちたように感じました。